電子日記

若処女が自由に雑記を書くブログです。

涼爽


昼下がりの君に
私からあげる
そう言って風鈴のような声をした謎めいた少女は
入道雲に消えた

私から?
名前を教えてほしい
それだけなのに
少女はまたもやにやりと笑い
同じように消えた

“いいから教えろよ!”
強引になってしまった
少女はソーダ味のアイスを咥え
食べ終わると同時に
アタリ棒を渡してきた

少女はなんだ?
正体を知りたい
いつもいつも意味深に現れては
意味深に消えていく
白いワンピースが似合う美少女に

母にこのエピソードを話した
すると慌てふためく母
この話は父や祖父母にまで広がった
どうやら僕は幽霊に魅入られてたらしい
真夏の幽霊に

夏祭り
浴衣の似合う女友達と二人きり
絶好のチャンスだったのに
僕はあの透明感のある少女に
目を奪われて追いかけていた

“ここに居たのか”
息を切らしながら肩で息をした
“ふふ”
やっぱり少女の声は風鈴のようで
でも次の瞬間

白昼夢のように消えていった






──She didn't show up next summer